2021年12月5日(日)のメッセージ
もはや戦うことを学ばない
「主は多くの民の争いを裁き、はるか遠くまでも、強い国々を戒められる。彼らは剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない」
(ミカ4章3節:日本聖書協会 新共同訳 旧約聖書)
牧師 伊藤真嗣
今年もクリスマスのシーズンがやってきました。先週は礼拝で第一のキャンドルが灯されましたが、教会の暦では、11月30日に一番近い日曜日から12月24日までを「アドベント」と呼んで、クリスマスを待ち望む期間を過ごします。日本語では「待降節」(たいこうせつ)と言っていますが、この「アドベント」の語源は冒険を意味する「アドベンチャー」という言葉です。実はアドベントには「待つ」という意味はありません。本来の意味は「到来」ということです。つまり「アドベンチャー」というのは「新しい体験がやってくる」、「次々と何かが起こる」という、わくわくするようなことなのです。
聖書の中では、イエス・キリストの誕生についてのキーワードとして「光」があります。新約聖書のヨハネによる福音書には、イエス誕生のことを「すべての人を照らすまことの光があって、世に来た」(1章9節)と書かれています。闇であるこの世の中に、全ての人を照らす本当の光がやってくるのが救い主の到来だ、と言っているのです。暗闇にうごめいているような人間社会に、消えることのない、真実な光がやってきて全ての人を明るく照らす驚くべき出来事が起こる。これは一人ひとりにとって、新しい人生が始まるアドベンチャー、「冒険」だというのです。
本日の聖書箇所のミカもそのようなチャレンジの中に立たされた預言者の一人でした。ミカが立たされたその時代は、戦争が絶え間なく続き、それによって貧富の格差は激しくなり社会は混乱しました。そんな激動の社会の中でミカは「終わりの日に」という言い方で、厳しい現実から目を背けることなく、その先にある希望を語りました。
日本も開戦後80年を迎えて、「もはや戦う事を学ばない」(聖書教育タイトル)」のように、もう二度と戦争はしない武力による解決は放棄するという平和の誓い・宣言が今一度必要ではないでしょうか。実際には、日本はこの12月8日、アジア太平洋戦争の開戦、いわゆる「真珠湾攻撃」80年がたつということなので、このことを平和の象徴であるイエス・キリストの誕生と重ねて考えるというのが、本日第二アドベントの課題なのだと思います。「もはや戦うことを学ばない」というタイトルは、今、わたしたちに、この80年という節目の年に、向かい合わなければいけないのだという神さまからのメッセージなのです。