メッセージ

2020年8月9日(日)のメッセージ

いのちを守る知恵

「エジプト王は彼女たちを呼びつけて問いただした。『どうしてこのようなことをしたのだ。お前たちは男の子を生かしているではないか。』助産婦たちはファラオに答えた。『ヘブライ人の女たちはエジプト人の女性とは違います。彼女たちは丈夫で、助産婦が行く前に産んでしまうのです。』神はこの助産婦たちに恵みを与えられた。民は数を増し、甚だ強くなった。」
(出エジプト記 1章19節~21節:日本聖書協会 新共同訳 旧約聖書)

牧師 坂元幸子

本日は長崎原爆投下75年の日です。1945年11時2分、長崎市上空で炸裂した原子爆弾は一瞬にして当時の人口24万人の内3分の一にあたる7万4千人の市民の命を奪い、市内の建物の36%を全焼・全半壊させました。1896年に伝道が開始された歴史を持つ長崎バプテスト教会では教会員2名が犠牲となり多くの人々が被爆しました。人類史上比類のない痛みを深く刻みつけるため、長崎教会では今も礼拝開始時刻を原爆投下の11時2分と定めています。

日本の8月は平和への祈りなしに過ごすことはできません。戦後75年経ち戦後生まれが8割以上を占める今、社会の中で戦争の悲惨さを語り継ぎ、主イエスが言われたように平和を実現する者として生きることは、私たち神の民の使命です。実際聖書、特に旧約聖書には数多くの戦争の事実が記され、民族と民族が血で血を洗う殺戮を繰り返してきたことが人間の歴史そのものであると証ししています。主イエスは「平和の君」(イザヤ9:5)として到来されました。

今朝の出エジプト記には長い間寄留の民であったイスラエルの民を脅威と感じるエジプト王がイスラエル民族の増加、特に長じて戦力となる男児の誕生を恐れて抹殺するという恐ろしい出来事が書かれています。しかし聖書は同時に、権力者の絶対的命令の下でも屈せず、知恵を尽くして支配の網をかいくぐろうとする人々もまたいたことを記します。二人の助産婦シフラとプアです。彼女たちは命の出生を助ける助産婦として幼子の殺戮に加担することは到底できませんでした。いのちは創造主からのあずかりものという神への畏れを彼女たちは持っていたのです。力と死が支配するこの世界で神を畏れ命を守ろうとする者を神は喜ばれ顧みられます。

杉原千畝さんをご存知でしょう。戦時中リトアニアのカウナス領事館の外交官だった彼はナチスの迫害を逃れてやって来るユダヤ人たちの命を救おうと6千人とも言われるビザ(通過査証)を発給しました。外務省の命令に反する行為でした。これにより杉原は解雇されます。「大したことをしたわけではない、当然のことをしただけ」と語る杉原を戦後イスラエル政府は「諸国民の中の正義の人」として表彰しました。日本政府が彼の名誉を回復したのは2000年、彼の死後14年、生誕100年の年でした。彼が命を救った人々の子孫は今世界中に広がっています。

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